建設業界において、「建築一式工事」という言葉は非常に重要な概念です。特に建設業許可を取得しようとする事業者にとっては、この工事の定義や範囲を正しく理解することが必要不可欠です。しかし、一般の方や新規参入を考える方の中には、「建築一式工事」という言葉に馴染みがなく、その意味や扱いについて誤解されているケースも少なくありません。
この記事では、建設業許可における「建築一式工事」とは何か、どのような業務が含まれるのか、許可を取得するにはどのような要件があるのかなど、基本から丁寧に解説します。
建築一式工事とは?
建築一式工事は、建設業法に基づく29種類の建設工事のうちの一つで、「一式工事」として分類される工種の一つです。建設業法施行令第2条では、「建築物の建設を目的とする工事であって、元請として全体を統括し、企画、指導、調整しながら施工する工事」とされています。
つまり、建築一式工事とは、建物全体の建築を総合的に請け負う工事であり、いわば「建物を一から建てる、または大規模に改修する工事」と考えられます。
一式工事と専門工事の違い
建設業許可には「一式工事」と「専門工事」がありますが、これらは施工範囲や業務内容において明確な違いがあります。
- 一式工事:建築一式工事や土木一式工事のように、複数の専門工事を統括して行う大規模な工事。
- 専門工事:大工工事、屋根工事、内装仕上工事など、特定の分野に特化した工事。
たとえば、建築一式工事の中には、大工工事、左官工事、電気工事など、複数の専門工事が含まれることが多く、それらを取りまとめて一つのプロジェクトとして管理・施工するのが建築一式工事の特徴です。
建築一式工事の代表的な例
建築一式工事の代表的な工事内容には以下のようなものがあります。
- 新築の戸建住宅・マンション・ビル建設
- 学校や病院、公共施設の建築
- 建物全体の大規模な増改築やリノベーション
- 耐震補強工事など全体的な構造変更を伴う工事
一部のリフォームや小規模な工事は、専門工事に分類されますが、建物全体に関わるような工事であれば建築一式工事とされることが多いです。
建築一式工事の許可要件
建築一式工事を請け負うには、建設業の「建築一式工事業」の許可が必要です。許可には、以下の2つの区分があります。
- 一般建設業許可:下請契約を主とする事業者向け
- 特定建設業許可:元請として下請に多額の工事を発注する事業者向け
また、許可を取得するには以下のような要件を満たす必要があります。
1. 経営業務の管理責任者の設置
過去に建設業の経営に5年以上関与した経験のある者が必要です。
2. 専任技術者の配置
建築士や施工管理技士など、一定の資格や実務経験を持つ技術者が必要です。
3. 財務基盤の確認
自己資本が一定以上あること、債務超過でないことが求められます。
4. 誠実性・欠格要件の確認
法令違反や反社会的勢力との関係がないかなどの審査が行われます。
どのような工事が「建築一式」として認められるか?
「建築一式工事」という名称がついていても、必ずしも全ての工事が一式工事に該当するわけではありません。実際には、以下のいずれかの条件を満たす工事が「建築一式工事」として認められます。
- 建築確認が必要な建築工事
- 一般的には延床面積が10㎡を超える増改築等が該当します。
- 複数の専門工事を統括して行う工事
- たとえば大工工事、左官工事、設備工事などが含まれている場合。
したがって、小規模な内装リフォームや設備交換のみでは、建築一式工事とは見なされない可能性があるため注意が必要です。
まとめ
建築一式工事は、建物の新築や大規模な改修など、総合的かつ統括的な工事を担う重要な業務です。建設業許可を取得するうえでは、どのような工事が「建築一式工事」に該当するのかを正確に把握し、適切な許可を取得することが求められます。
建設業界では、法的な区分や許可の有無がビジネスの信頼性に直結するため、専門家に相談しながら準備を進めることが成功の鍵となります。
これから建築一式工事に関わる事業を始める方や、許可の取得を検討されている方は、ぜひ今回の内容を参考に、自社の状況にあった対応を進めていってください。
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