土木一式工事とは?

建設業において、特定の工事を請け負うためには「建設業許可」が必要です。その中でも「土木一式工事」は、多くの公共事業や大型工事に関わる重要な分類です。しかし、「一式工事って具体的に何?」「専門工事との違いは?」といった疑問を持つ方も少なくありません。

この記事では、**建設業許可における「土木一式工事」**について、定義から取得要件、対象となる工事内容、さらには取得することのメリットまで、わかりやすく解説します。


■ 土木一式工事とは?定義と特徴

「土木一式工事」とは、建設業法に基づく29種類の建設業許可業種のうちの1つで、「一式工事」に分類される業種のひとつです。建設業法第2条では、以下のように定義されています。

土木一式工事:土木工作物を築造する工事で、工事全体の企画・指導・調整などを行いながら、複数の専門工事を取りまとめて施工する工事。

つまり、単純な作業や個別の工種ではなく、「元請け」として全体を取りまとめる立場で行う総合的な土木工事が「土木一式工事」に該当します。


■ 対象となる工事の具体例

では、実際に「土木一式工事」とはどのような工事を指すのでしょうか?以下に代表的な工事を挙げます。

  • 道路工事(アスファルト舗装、道路拡張など)
  • 河川改修工事
  • 橋梁工事
  • 港湾施設の整備工事
  • ダム建設工事
  • トンネル工事
  • 造成工事(宅地造成など)

これらは一つの業種では完結せず、土工、コンクリート工、鋼構造物工、舗装工、しゅんせつ工など複数の専門工事が組み合わされるケースが多くあります。そのため、「一式工事」としての包括的な知識と管理能力が求められます。


■ 土木一式工事と専門工事(とび・土工工事など)の違い

ここでよく混同されがちなのが、「とび・土工・コンクリート工事」などの専門工事との違いです。

比較項目土木一式工事専門工事(例:とび・土工)
工事の範囲複数工種の総合管理単一または類似の工種のみ
元請け・下請け元請けが基本下請けが多い
工事の規模中~大規模が中心小~中規模が中心
許可の取得難易度高め(経験・財産的要件あり)比較的取得しやすい

つまり、「土木一式工事」は総合的な工事のディレクター的ポジションであり、「専門工事」はその中で特定の技術を担当するスペシャリストといえます。


■ 建設業許可で「土木一式工事」を取得するには?

「土木一式工事」の建設業許可を取得するためには、以下のような要件を満たす必要があります。

① 経営業務の管理責任者がいること

原則として、5年以上の経営経験(またはそれに準ずる経験)が求められます。

② 専任技術者が在籍していること

1級土木施工管理技士や、**2級土木施工管理技士(種別:土木)**などの国家資格を持っていることが必要です。

③ 財産的要件

一般建設業許可であれば、500万円以上の自己資本または資金調達能力が必要です。

④ 誠実性・欠格事由に該当しないこと

過去に法令違反がないことや、暴力団との関係がないことなどが求められます。

これらの要件は、個人事業主でも法人でも共通ですが、特に「経営経験」や「技術者の確保」がネックになることが多いため、実務経験をしっかりと証明できる書類作成が重要です。


■ 土木一式工事の許可を取得するメリット

建設業者が「土木一式工事」の許可を取得することには、次のようなメリットがあります。

1. 大型公共事業への参入が可能になる

国や自治体の発注する工事では、「土木一式工事」の許可がなければ受注できないケースが多くあります。

2. 元請けとして事業展開がしやすくなる

複数の下請業者を取りまとめる立場になれるため、事業規模を大きくしやすくなります。

3. 対外的な信用力の向上

建設業許可を持っていることで、銀行融資や取引先との信頼関係が強化されます。

4. 幅広い工事が可能になる

例えば「造成工事」など、複数の専門工事が必要となる現場でも柔軟に対応できるようになります。


■ よくある誤解と注意点

● 専門工事だけでは大規模工事は請け負えない

土工や舗装工事の許可があっても、それだけでは「道路工事全体」は請け負えません。「一式工事」としての許可が必要になります。

● 一式工事の許可があっても専門工事がすべてできるわけではない

「土木一式工事」の許可があっても、とび・土工工事や舗装工事などの専門工事を単体で請け負う場合は、別途それぞれの許可が必要です。


■ まとめ

「土木一式工事」は、建設業の中でも特にスケールが大きく、社会インフラ整備に直接関わる重要な工事です。そのため、取得には一定のハードルがあるものの、許可を得ることで事業の幅が広がり、より大きな案件にも対応できるようになります。

これから建設業でのステップアップを目指す方や、より大きなプロジェクトに挑戦したい企業にとって、「土木一式工事」の建設業許可は大きな武器になるはずです。

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