建設業の世界では、一定規模以上の工事を請け負うには「建設業許可」が必要です。その中でも多くの現場で関わりが深いのが「とび・土工工事業」です。しかし「とび工事」と「土工工事」、名前からはイメージが湧きにくいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、これから建設業許可を申請しようと考えている方に向けて、「とび・土工工事業」の定義や対象となる工事内容、許可取得のためのポイントを分かりやすく解説します。
■ とび・土工工事業とは?
「とび・土工工事業」は、国土交通省が定める29業種のひとつであり、以下のような工事を含んでいます。
● とび工事とは
足場の組立や鉄骨の組立、重量物の揚重(ようじゅう)など、高所作業に関連する工事です。主に建築工事において、建物の骨組みを建てたり、作業用の足場を組み立てたりする作業が該当します。
● 土工工事とは
掘削・埋戻し・整地・地盤改良など、土地の造成や地面の基礎的な作業に関する工事を指します。重機を使用して土を掘り起こしたり、地面を平らにしたりする作業が含まれます。
● その他の対象工事
とび・土工工事業の範囲には以下のような工事も含まれます。
- コンクリート工事
- 土留め工事
- はつり工事(コンクリートの削り・はがし)
- 山留め工事
- グラウンドアンカー工事 など
つまり、「建物を支える基礎工事」や「建物の施工前の準備作業」など、建設の初期段階における重要な工程を担う業種です。
■ 建設業許可が必要になるケース
建設業許可は、原則として「軽微な工事」を除くすべての請負工事に必要です。
- 土工・とび工事などの個別工事で500万円(税込)以上の請負金額
- 元請・下請いずれの場合も対象
- 材料費を含む「一式の契約金額」で判断されます
例えば、足場工事で450万円、別日でコンクリート打設200万円というように工種が異なっても、同一契約内で500万円を超える場合は許可が必要です。
■ 許可を取得するための要件とは?
「とび・土工工事業」の許可を取得するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
① 経営業務の管理責任者(経管)
過去5年以上、建設業の経営に携わった経験が必要です。個人事業主、法人の役員、支店長などが該当します。
② 専任技術者
下記いずれかに該当する方が必要です。
- 「とび・土工工事業」に関する実務経験が10年以上ある方
- 施工管理技士(1級または2級)など、技術資格を保有している方
- 指定学科卒業+一定の実務経験(例:大学卒業+3年経験)
この専任技術者は、営業所に常勤している必要があります。
③ 財産的基礎
一般建設業許可の場合、以下のいずれかに該当することが必要です。
- 自己資本が500万円以上ある
- 直前5年間に建設業の許可を受けていた実績がある
- 500万円の資金調達能力を証明できる
④ 誠実性・欠格要件
暴力団関係者や刑罰歴がある者が役員にいないなど、社会的信用のある事業体であることが必要です。
■ よくある質問
Q1:足場だけ組み立てているけど、これは許可が必要?
→ 足場組立の請負金額が500万円(税込)以上であれば必要です。元請・下請かは関係ありません。
Q2:グループ会社の応援として作業するだけでも許可は必要?
→ 「応援」といっても金銭のやりとりがあれば「請負」とみなされます。請負金額が基準を超える場合は許可が必要です。
■ 申請の流れと注意点
- 必要書類の収集(登記簿謄本、決算書、資格証、住民票など)
- 専任技術者の確認と証明書類の整備
- 経営業務管理責任者の経験証明(確定申告書や登記記録などで証明)
- 建設業許可申請書の作成・提出(都道府県の建設業課へ)
- 審査期間(約30日〜45日程度)
- 許可証の交付
**注意:**実務経験10年以上などの証明には工事台帳、請求書、契約書など多数の証拠資料が求められます。不足があると受理されないこともありますので、事前に行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
■ まとめ
「とび・土工工事業」は、建設工事の土台を支える重要な業種です。足場の設置や掘削・整地といった現場の基礎的作業を担っているからこそ、技術と信頼が求められます。許可を取得することで、500万円を超える工事にも堂々と携わることができ、企業としての信用も高まります。
これから建設業の許可取得を目指す方は、ぜひ自社の体制や経歴を見直し、スムーズな申請に向けて準備を進めましょう。
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